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人間の音の知覚をPdで実験、ITDとILD

我々は例え目をつぶっていても、音がだいたいどの方向から聞こえるかわかります。これはどうしてでしょうか?
それは我々が2つの耳を持っているからです。例えば右から物音がした時に、右の耳に入る音の大きさと左の耳に入る音の大きさを比べると、右の耳の方が大きいのは自明ですし、また右の耳に音が先に到達し、その後左の耳に届くというのも納得いくと思います。このように両耳に入ってくる音の大きさの差や音の入ってくるタイミングの差を解析し、我々は音源の位置を聴覚のみで特定する事を日常茶飯的に行なっています。

もう少し専門的な言葉を使うと、両耳に入る音の強さの違いはILD(Interaural Level Difference = 両耳間強度差)といい、タイミングのずれはITD(Interaural Time Difference = 両耳間時間差)といいます。人間はこのILDとITDの情報を元に音源の位置の特定を行なっているのです。

このチュートリアルでは我々のILDとITDを簡単なパッチで体験してみます。ヘッドホンをして音を聞くと効果がよりよくわかります。

まず以下のパッチでは、右チャンネルと左チャンネルに同じノイズの信号を送っていますが、真ん中のbalanceと書いてあるナンバーボックスを0から1の範囲で操作すると、文字通り、左右のスピーカーに送られる音の振幅のバランスが変化します。これに伴って、音像が左から右、右から左へ動いたように知覚されます。このように音の強さのバランスを操作する事によって定位を決めるのはパンニングなどと言われます。このパンニングの方法はリニア・パンニングと呼ばれ、音像を真ん中にもってくると、左右に振った時より、遠く、小さく聞こえるため一般的には使われていませんが、パンニングの原理を理解し、ILDを体験することはできたと思います。

[caption id="attachment_1227" align="aligncenter" width="238"]ILD ILD[/caption]

次のパッチは、短い10サンプルのノイズ音を左チャンネルにまず送り、サンプル単位で若干遅延させて右チャンネルに送っています。「delay~」はサンプル単位で遅延を行うオブジェクトです。遅延時間が10サンプルを超えるあたりから定位が左よりに知覚されてくると思います、これがITDです。全く同じ音の強さであるにもかかわらず、耳に入るタイミングが若干違うと人間の脳はそれを「音源の位置」と解釈します。また、遅延時間が長すぎると、この例では遅延時間が100サンプルを超える辺りから音が分離して聞こえてきこえます。

[caption id="attachment_1228" align="aligncenter" width="229"]ITD ITD
[/caption]

一般的にミキサなどに付いているパンナーはILDのみを対象とし、音の定位を左右のスピーカーから出てくる同一の信号の振幅(音量)の差で表現しようとしますが、実世界ではITD、ILDの両方の情報を使って我々は音源の位置を知覚しています。もちろんPdでプログラミングすれば、ITD、ILDの両方を使って音の動きを表現する事ができます。

さらに言えば、下図のように、脳が混乱するような、右側の音量の方が大きいけど、左側の方が早く聞こえるというような音の定位に対するイタズラも可能です。ノイズの定位はどこにあるでしょうか?

[caption id="attachment_1231" align="aligncenter" width="211"]ITDとILDのコンフリクト ITDとILDのコンフリクト[/caption]

この項のパッチをダウンロード

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