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Black Vox


Black Vox

Chikashi Miyama

Black Voxは自作センサー楽器、Peacockのための作品である。Peacockは2009年にハードウェア、電子回路ともに作曲者によって設計・製作された、3次元非接触型パフォーマンス・インターフェースであり、2005年より制作を開始した、自作楽器シリーズの第7番目に当たるデヴァイスである。  Peacockは35個の赤外線センサーを搭載し、デヴァイスとパフォーマの手の距離を毎秒約70回の頻度で測定し、その結果をシリアル・データとしてUSBケーブルを通してホスト・コンピュータに送信する。そして、ホスト・コンピュータで稼働しているpd-extended上に実装されたシンセサイザは、デヴァイスからのデータを基に様々な音声をリアルタイムで生成する。  当作品はジェスチャー、テクスチャー、デンシティなどのアコースマティック音楽のヴォキャブラリーをパフォーマーの身体的なモーションと結びつける事が主題となっている。曲中、パフォーマーの手の動きは200を越えるシンセサイザーのパラメータにマップされ、そのマッピングは逐次変化していく。そのため、曲中を通して1つの身体的ジェスチャーに対して、同じ音響的レスポンスが生成されることはない。  また、シンセサイザには独自にC言語で開発したカオス・アトラクタ・オブジェクトが組み込まれており、単純な乱数化とは違った「複雑」なランダマイゼーションが音程や音色のパラメータに適応され、より有機的で独特な音響エフェクトを作り出している。  タイトルのBlack Voxには3つの意味がある。第一に文字通りにデヴァイスを示唆する「黒い箱」。第二に「声」(=ラテン語でVox)⎯⎯本作品で用いられているすべての音は、6秒の女性による英語のスピーチをMiller Puckette氏が2005年に考案したPhase bash シンセシスによってリアルタイムに加工することによって実現されている。そして、第三に、敬愛する電子音楽と人間の声の関係とその可能性を追求したイギリス人作曲家、Travor Wishart氏の連作、Voxシリーズへのオマージュが込められている。